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 あっと驚くような仕掛けのミステリー、想像を絶するホラーなど、見なれた世界の裏側にひそんでいる<謎>や<恐怖>を、鮮やかに描いてみせてくれる作家の井上夢人さん。
  そんな井上さんがこよなく愛しているのは、映画とビートルズと猫。「作家でなければ、映画監督になりたかった」とおっしゃるとおり、実際に助監督を務められたこともあるそう。
  そんな井上さんは、映画を見ながらも、その裏側にある監督の思惑や不思議さに気づいてしまうみたいです。
  「有名な映画のリメイク版ってたくさんあるけれど、監督はどうしてリメイク版を作りたくなるのかな……比べられるのはわかりきっているのに」という井上さんのひとことがきっかけで、この連載が始まりました。
  ご紹介したい映画が山ほどある中、ミステリーの要素があって、かつリメイク版が制作されている作品にしぼって、その魅力と謎に迫ります。
  ここでご紹介する作品は、すべてDVDで手に入るものばかりです。ぜひあなた自身の目でオリジナルとリメイク版を見比べてみてください。

※エッセイの性格上、取り上げる作品の内容、仕掛け、結末などに触れています。ご覧になっていない作品についてはご注意下さい。
※また、文中で取り上げる作品にはリンクを貼っておりますが、個別の映画(ビデオ・DVD)商品の購入等についてのお問い合わせは、リンク先であるamazonへお願いいたします。

井上夢人からのメッセージ

 すごい作品との出会いは衝撃的です。

 音楽、絵画、小説、そして映画――そんな衝撃的な感動に出会うと、僕たちはとても落ち着かない気分に襲われます。とくにそれが作曲家だったり、画家だったり、小説家だったり、映画監督だったり――つまり自分も何かを創っている人だったりすると、お尻の下がムズムズしてきて、自分でも何かをしたくなってしまうのです。ふつふつと沸き上がってくるこの居ても立ってもいられない感覚。
 これは、いったい何なのでしょうか。
 悪魔がささやくように、それは魅力的な誘惑となって、僕たちに微笑みかけてきます。

 《リメイク版》と呼ばれる映画作品が、最近、とくに多くなったように感じます。
 その《リメイク版》の製作に携わった人たち――とりわけ監督は、なぜ、その悪魔の誘惑に屈してしまったのでしょう。

 そんなことを、ときどき思ったりするのです。

プロフィール
井上夢人(いのうえ・ゆめひと)

 井上夢人さんは、友人の徳山諄一さんと二人で「岡嶋二人」というペンネームでデビューしました。
 昨年リバイバル・ヒットした『99%の誘拐』(講談社文庫)は、記憶に新しいことと思います。
 1982年のデビュー作『焦茶色のパステル』(講談社文庫)で、ミステリー界の登竜門と言われる江戸川乱歩賞を、1985年の『チョコレートゲーム』(講談社文庫)では、日本推理作家協会賞を受賞します。岡嶋二人名義で28作品を発表後、1989年の『クラインの壺』(講談社文庫)を最後に、コンビを解消します。
 その後は、井上夢人として作家活動を続け、『あくむ』『パワー・オフ』(ともに集英社文庫)『ダレカガナカニイル…』『プラスティック』『もつれっぱなし』『オルファクトグラム』(いずれも講談社文庫)など、常にミステリー界の話題をさらう作品を発表しつづけています。
 パソコンやネットを駆使し、時代を先取りしたり、奇想天外なアイデアで読者を翻弄したりと、井上さんの作品は常に新鮮な驚きに満ちています。最新刊はインチキ女性霊能者と彼女をサポートするユニークなチームの活躍を描いた『the TEAM』(集英社)です。

●公式ホームページ http://www.yumehito.com/


ブックリスト
井上夢人作品リスト
◆井上夢人の作品
『ダレカガナカニイル…』(1992年/新潮社)→講談社文庫
『あくむ』(1993年/集英社)→集英社文庫
『おかしな二人』(1993年/講談社)→講談社文庫
『プラスティック』(1994年/双葉社)→講談社文庫
『パワー・オフ』(1996年/集英社)→集英社文庫
『もつれっぱなし』(1996年/文藝春秋)→講談社文庫
『メドゥサ、鏡をごらん』(1997年/双葉社)→講談社文庫
『風が吹いたら桶屋がもうかる』(1997年/集英社)→集英社文庫
『オルファクトグラム』(2000年/毎日新聞社)→講談社文庫
『クリスマスの4人』(2001年/光文社)→光文社文庫
『the TEAM』(2006年/集英社)→集英社文庫
『あわせ鏡に飛び込んで』(2008年/講談社文庫)

◆岡嶋二人の作品
『焦茶色のパステル』(1982年/講談社)→講談社文庫
『七年目の脅迫状』(1983年/講談社)→講談社文庫
『あした天気にしておくれ』(1983年/講談社)→講談社文庫
『タイトルマッチ』(1984年/角川書店)→講談社文庫
『開けっぱなしの密室』(1984年/講談社)→講談社文庫
『どんなに上手に隠れても』(1984年/徳間書店)→講談社文庫
『三度目ならばABC』(1984年/講談社)
『チョコレートゲーム』(1985年/講談社)→講談社文庫
『なんでも屋大蔵でございます』(1985年/新潮社)→講談社文庫
『解決まではあと6人』(1985年/双葉社)→講談社文庫
『とってもカルディア』(1985年/講談社)→講談社文庫
『ちょっと探偵してみませんか』(1985年/講談社)→講談社文庫
『ビッグゲーム』(1985年/講談社)→講談社文庫
『ツァラトゥストラの翼』(1986年/講談社)→講談社文庫
『コンピュータの熱い罠』(1986年/光文社)→講談社文庫
『七日間の身代金』(1986年/実業之日本社)→講談社文庫
『珊瑚色ラプソディ』(1987年/集英社)→講談社文庫
『殺人者志願』(1987年/光文社)→講談社文庫
『ダブルダウン』(1987年/小学館)→講談社文庫
『そして扉が閉ざされた』(1987年/講談社)→講談社文庫
『眠れぬ夜の殺人』(1988年/双葉社)→講談社文庫
『殺人!ザ・東京ドーム』(1988年/光文社)→講談社文庫
『99%の誘拐』(1988年/徳間書店)→講談社文庫
『クリスマス・イヴ』(1989年/中央公論社)→講談社文庫
『記録された殺人』(1989年/講談社)
『眠れぬ夜の報復』(1989年/双葉社)→講談社文庫
『クラインの壺』(1989年/新潮社)→講談社文庫
『熱い砂──パリ・ダカール11000キロ』(1991年/講談社)
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